この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天使さまっ!
第3章 天使さまの実情
エリン先生の歩調にあわせて病院の廊下を一緒に歩く私。失礼かもしれないけれど、まずはおずおずと訊いてみた。
「あのぅ……エリン先生は」
「しかこちゃんて可愛い名前だね」
本当にお医者さまなんですか?と確認するより早く、エリン先生の明るい声が響いて、小さな私の声なんか簡単に掻き消されてしまうの。
「……私は。自分の名前は嫌いです」
話のコシを折られたせいもあってふてくされた私に、エリン先生は少し首を傾げて考えてから
「僕の両親の話をいいですか?」と
突拍子もなく言ったの。
「…………どうぞ」
なんで?とは、さすがに言えないまま、私は話を聞く。
「僕の父は旅人で、ある日日本に来ていた時に病気になって倒れてしまい、たまたま通りすがりの女性が助けてくれました。外人なので保険証とかもなくて病院にはいかなかったそうですが、女性はナースだったために適切な処置をして父は命拾いしたんです」
「はぁ」
「元気を取り戻した父に女性は手料理をご馳走してくれました。エリンギのバター炒めです。それで産まれた僕がエリンなんです」
エリン先生はそう言ってニッコリ笑うと「変な名前でしょ?」と付け足した。
あ、
私が自分の名前を嫌いだとか言ったから……。
「ちなみにその女性というのは母です」
うん、それはわかる。
「ちなみに母はここの婦長です」
「ぅえっ!?」
「ちなみに婦長は院長の娘です」
ニコニコしながら、エリン先生は院長の孫だと遠回しにご説明くださったわ!ああ!なるほど。だからリアルお医者さんごっこをしているのね!
って、
私は子どもの遊び相手を任されたってことなのかしら?これでもちゃんと正規のルートで勉強して資格とったのに!