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天使さまっ!
第3章 天使さまの実情

エリン先生の歩調にあわせて病院の廊下を一緒に歩く私。失礼かもしれないけれど、まずはおずおずと訊いてみた。


「あのぅ……エリン先生は」

「しかこちゃんて可愛い名前だね」


本当にお医者さまなんですか?と確認するより早く、エリン先生の明るい声が響いて、小さな私の声なんか簡単に掻き消されてしまうの。


「……私は。自分の名前は嫌いです」


話のコシを折られたせいもあってふてくされた私に、エリン先生は少し首を傾げて考えてから

「僕の両親の話をいいですか?」と

突拍子もなく言ったの。


「…………どうぞ」


なんで?とは、さすがに言えないまま、私は話を聞く。


「僕の父は旅人で、ある日日本に来ていた時に病気になって倒れてしまい、たまたま通りすがりの女性が助けてくれました。外人なので保険証とかもなくて病院にはいかなかったそうですが、女性はナースだったために適切な処置をして父は命拾いしたんです」

「はぁ」

「元気を取り戻した父に女性は手料理をご馳走してくれました。エリンギのバター炒めです。それで産まれた僕がエリンなんです」


エリン先生はそう言ってニッコリ笑うと「変な名前でしょ?」と付け足した。

あ、

私が自分の名前を嫌いだとか言ったから……。


「ちなみにその女性というのは母です」


うん、それはわかる。


「ちなみに母はここの婦長です」

「ぅえっ!?」

「ちなみに婦長は院長の娘です」


ニコニコしながら、エリン先生は院長の孫だと遠回しにご説明くださったわ!ああ!なるほど。だからリアルお医者さんごっこをしているのね!

って、
私は子どもの遊び相手を任されたってことなのかしら?これでもちゃんと正規のルートで勉強して資格とったのに!

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