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狂い咲く花
第18章 二、朝霧草 - 蘇る想い出
年末に近づくと頻繁に蘭子を預けに来るようになり、迎えに来るのはいつも葉月だった。
仕事で疲れているはずなのに、自分の家を素通りして蘭子を引き取ってから、もと来た道を引き返して行く。
これ以上、面倒をかけられないと思っているのか、美弥が連れて行くからと言っても聞き入れてはくれなかった。
「ただいま」
葉月の声が響いても、相良家は静まりかえっていた。
美弥と蘭子の気配すらしない。
心配になり、いつも2人がいる部屋へと足を進めた。
「姉さん…」
声をかけてみても返事はなかった。
「入るよ」
一応断って襖を開けた。
そこには2人寄り添って寝ている姿があり、安堵しながら近づいた。
すぐ傍に座っても美弥が目を覚ますことはないほど熟睡していた。
蘭子も美弥に抱きしめられて安心したようにスヤスヤと寝息を立てていた。
その微笑ましい姿を見て、目を細め思いにふける。
まだ美弥だけを愛していた頃に、夢見ていた光景がそこにある。
2人の未来に、何も疑うことがなかった幸せな日々。
結婚して子供をもうけ、3人幸せに暮らすという普通の幸せの幻影が、そこに映し出されていた。
もう二度と手にすることがない光景だと分かっていても、思わずにはいられなかった。
美弥の寂しそうな言葉を聞いて、それは一層強くなっていく。
仕事で疲れているはずなのに、自分の家を素通りして蘭子を引き取ってから、もと来た道を引き返して行く。
これ以上、面倒をかけられないと思っているのか、美弥が連れて行くからと言っても聞き入れてはくれなかった。
「ただいま」
葉月の声が響いても、相良家は静まりかえっていた。
美弥と蘭子の気配すらしない。
心配になり、いつも2人がいる部屋へと足を進めた。
「姉さん…」
声をかけてみても返事はなかった。
「入るよ」
一応断って襖を開けた。
そこには2人寄り添って寝ている姿があり、安堵しながら近づいた。
すぐ傍に座っても美弥が目を覚ますことはないほど熟睡していた。
蘭子も美弥に抱きしめられて安心したようにスヤスヤと寝息を立てていた。
その微笑ましい姿を見て、目を細め思いにふける。
まだ美弥だけを愛していた頃に、夢見ていた光景がそこにある。
2人の未来に、何も疑うことがなかった幸せな日々。
結婚して子供をもうけ、3人幸せに暮らすという普通の幸せの幻影が、そこに映し出されていた。
もう二度と手にすることがない光景だと分かっていても、思わずにはいられなかった。
美弥の寂しそうな言葉を聞いて、それは一層強くなっていく。