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第18章 二、朝霧草　-　蘇る想い出

「結婚なんてするなよ…」

葉月の本心が口をつく。
それが自分勝手な言葉とは分かっていた。
だけど、思わずにはいられない。
他の男の手に触れられると思うと嫉妬心が沸き起こる。
そっと髪に触れ、その髪を指に絡めた。
艶やかできれいな黒髪は以前と変らなかった。
何も変らない美弥。
目を瞑ると、いつでもあの笑顔が蘇った。

『葉月』

と優しい声音で呼ばれて幸せを感じていたあの頃の、幸せだった時が蘇る。

「俺が、幸せにしてあげたかった…」

一粒の涙が美弥の頬に流れ落ちる。

「あの後…俺に何を言いたかったんだ…？今でも…。その後の言葉を俺は知りたい…まだ好かれていると、うぬぼれても…」

目を開いて美弥を見つめる。
美弥にこぼれた自分の涙を優しく拭き取る。
そして顔を近づける。
心臓の音が聞こえているのではないかと思うほど鳴り響く。
あれ以来、誰とも唇を重ねることをしなかった葉月が、今、美弥の唇と重ね合わせる。
麻耶への罪悪感と、美弥への消えることのなかった愛情を込めて…