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狂い咲く花
第19章 二、牡丹一華 - 希望
今更何を言っているのだろうかと、人事のように彼の言葉を聞く。
あれから2年以上もたった。
なぜ今なんだろうと思う。
あの時に麻耶ではなく自分を選んで今の言葉を言ってくれていたらと、今更どうしようもないことを思う。

「私の事は心配しなくていいから…葉月は蘭子と麻耶の事を考えてあげて」

「だけど」

「葉月が選んだのは私じゃなくて麻耶でしょ?今更…今更“心配してる”なんて言わないで」

心の中に秘めていた思いが爆発しそうになる。
今の関係がお互いにとって良い距離だと分かっている美弥は、その先の言葉はどんなことがあっても口に出してはいけないと心が警告する。

「俺は…」

先に一線を引かれた葉月は唇を噛みしめて苦し気な表情を見せる。

「戸畑さ…幸信さんはとてもいい人よ。会ったばかりだけど、一緒にいると心が休まるの…私の心を理解してくれる…あの人となら幸せになれると思ってしまったの」

葉月の顔が歪む。

「誰も…葉月さえも気が付いてくれなかった私の心を幸信さんは気が付いてくれた。私に涙を流させてくれた。」

「美弥…」

葉月が手を伸ばして美弥に触れようとする。
しかし、美弥は一歩身体を引いてそれを避けた。

「私を幸せにできるのは、あなたではなかった…だから…あなたが麻耶を選んだのは正解で、私は彼に会うために今まで独りだった…」
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