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狂い咲く花
第20章 二、木瓜 - 平凡
───…
「姉様~」
離れに着いた麻耶は部屋の中を覗き、本を読んでいる美弥に声を掛ければ美弥は落としていた目線を上げた。
「いらっしゃい…蘭子は?」
「父様と母様のところ…姉様は本読んでたの?」
「そうよ…麻耶は元気そうね」
「元気だよ~蘭子も色々喋るようになったし、動き回るから大変」
子供の成長を話す麻耶を見て子供以上の成長にびっくりする。
「ちゃんと母親やってるのね」
「姉様のおかげよ。たまに、1日自由にしてもらってるから気が楽なの。」
美弥に抱き付き甘えながら初めてのお礼を口にする。
自分勝手で甘えることしかなかった麻耶の成長をうれしく感じた。
「そう…よかったわ。今は幸せ?」
「うん。とっても幸せよ。姉様も、幸信さんと幸せでしょ?」
美弥は幸信と前向きに付き合っていた。
彼の『ゆっくり進んでいこう』と言う言葉を信じて少しずつ前に進み始めていた。
「今日は?これから葉月とでかけるの?」
「うん。2人で買い物に行くの…2人ででかけるのいつぶりかなぁ~楽しみ」
「そう…楽しんできてね。市場で会うかもしれないけど」
「姉様も行くの??会えたらいいね」
そんな話を続けていると外から葉月の呼ぶ声が聞こえた。
優しく麻耶を呼ぶ。
「麻耶、行くよ」
「は~い…じゃあ、姉様行ってきます」
葉月の横に走って行く麻耶を見て羨ましく思う。
本当はそこに立つのは自分のはずだったのにと小さな嫉妬が芽生えるのを自覚した。
幸信と新しい道を歩いて行くと決めても、まだ気持は追いついてはいなかった。
「姉さん。いってきます。」
軽く頭を下げて、麻耶に寄り添いながら出かける姿を悲しみの目をして見送った。