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狂い咲く花
第20章 二、木瓜 - 平凡
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「ね~。葉月~。これ、かわいいね…」
麻耶が振り返ると、そこには知らない人が立っていた。
ほんの数分前まで後ろにいたはずの葉月の姿はどこにもない。
キョロキョロと葉月を探しても姿はどこにもなく、手に持っていた髪飾りをもとに戻すと、慌てて葉月を探し始めた。
人にぶつかりながらも懸命に探していると、遠くに葉月の姿を見つける。
小さくても、麻耶には葉月だとはっきりと分かる。
葉月も麻耶をさがしているようでキョロキョロとあたりを見回していた。
大きく手を振ってみても、まだ葉月の目には留まらない。
大きな声を出そうと口を開いた。
「はづんん―――――――んん」
声が出る前に何かで口をふさがれて、誰もいない方に引きずり込まれる。
バタバタと足をばたつかせて逃げようとしても握られた手はびくともしない。
怖くなった麻耶の身体からは力が抜けて、そのまま座り込んでしまった。
「麻耶…僕だよ…」
後ろから優しい声が聞こえ、振り返ればそこには南和がいた。
目を丸くして驚いた目からはポロポロと涙が溢れでる。
「ごめん…驚かせる気はなかったんだ…」
泣き出した麻耶にオロオロしながら宥めようとするが、その手を払い除け肩を押されて後ろに倒れた。
「ひっく…南和のばか…嫌いっ」
嫌いの一言に異常に反応する南和。
「麻耶…嫌いだなんて言わないで…麻耶に会えなくて気が狂いそうだったんだよ」
体制を立て直して、力強く抱きしめる。