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狂い咲く花
第21章 二、杜鵑草 - 秘めた思い
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夕日が沈みかけ、赤く染まった道をゆっくりと歩いて家に向かい、2人は家の近くまで来ると名残惜しそうに足を止めて、そっと手を繋いだ。
初めて繋がれる手に美弥の心は跳ねドキドキしてしまう。
だけど、それは嫌ではなくて心地よく思えた。
「今日は、楽しかった…美弥さんといると時がたつのが早くて別れるのが寂しくなります」
幸信が美弥の目を真っ直ぐに見つめて正直な気持ちを告げる。
その言葉はそのまま美弥の心の中に入っていく。
「私もです…幸信さんと一緒にいると心穏やかになります。」
美弥も同じだと告げると、幸信の手が美弥の頭の後ろに回り自分の胸に引き寄せる。
空いた片方の手を背中に廻して、優しく抱きしめた。
美弥の耳に息がかかるほど近くで幸信の声が聞こえる。
「結婚する前に抱きしめるなど、不健全かもしれません。…嫌ではないですか?」
優しく聞いてくる幸信に小さく横に振る。
「よかった…。私は貴方が好きです。会えば会うほどに惹かれていきます。もうあなたしか見えない…愛しています…」
優しい声で愛を紡ぐ。
その声が耳に届き、心に届き、美弥の心は満たされていく。
報われない想いより、報われる想いに手を伸ばしたくなる。
「私もです…」
自然と想いが言葉になる。