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狂い咲く花
第26章 二、昇り藤 - あなたは私の安らぎ
葉月は全てを話した。
雨の中、2人の帰りが遅くなることを伝えるために先にこの家にきた時、微かに美弥の叫び声が聞こえ、気のせいかと思いながらも胸騒ぎがしてかけつけたことを。
そして、部屋の中に入ったときに見て聞いて話したことを全て話す。
話が進むにつれて父様の顔は歪み怒りに満ちてくる。
それでも最後まで葉月の話を聞いた。
今すぐにでも、幸信を捕まえて殴りたい衝動を堪える。

「葉月…礼を言う。ありがとう…美弥を守ってくれて…ありがとう」

父様は何度も“ありがとう”と告げる。

「あいつのことはどうするつもりですか…」

「あいつか…明日の朝、先方に行って話してくるしかないだろう…殴り殺してやりたいが…美弥の為には大事にしないほうがな…」

葉月も父様も同じ気持ちだった。
許されるものなら殺してしまいたいと胸の内では思っていた。

「未遂とはいえ…これからの美弥が心配です」

一瞬だけ起きた時のことを思い出す。
これからも思い出してしまうのかと思うとやるせない気持ちが込み上げてくる。

「傍にいてやることしかできんのが…つらいな…」

溜息をつきながら額に手を当てて黙り込んでしまった。
葉月はもう自分のすることはないとおもい腰を上げる。

「父さん。麻耶が家で待ってるから今日は帰ります。心配してるだろうし」

「そうだな…雷もなってる…今日は本当に助かった…また話そう」

そう話しながら玄関に向かって歩き出した時だった。
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