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狂い咲く花
第26章 二、昇り藤 - あなたは私の安らぎ
「イヤ―――――――――…」

暗闇の中、美弥の悲鳴が響き渡った。
その声に驚いた2人は慌てて美弥のいる部屋に急いで駆けていく。
部屋の中に飛び込むと、美弥が部屋の隅で震え丸くなっていた。
母様が手を出せば、身体を硬直させ息さえも止めているようだった。

「どうしたんだ?」

「それが…目を覚まして私を見た途端に悲鳴をあげて…私が誰だか理解してないようなんです…」

悲しそうに話しながら美弥に手を伸ばす。

「美弥、私よ。母様よ」

優しく問いかけても、その手を取ることはなく怯えきっていた。

「母さん、変わってもらえますか?」

母様は小さく頷き、今度は葉月が美弥に声をける。

「美弥…」

「こっ…こないで…」

怯え切った声で葉月の言葉も美弥の耳には届かなかった。
こんなことなら、一時でも傍を離れるべきではなかったと後悔する。

「これから先は近づかないから安心して…俺の声思い出して…」

身を固くしている美弥の前に胡坐をかいて座り込んだ。

「大丈夫だから。なっ美弥。俺は大丈夫だろ?」

「いやっ…こわい…」

「うん。怖かったな…だけどさ。もう大丈夫だから。俺の声を聞いて」

近づくことも触ることもせずに、声だけを根気よくかけていく。
その甲斐もあり美弥の心は次第と落ち着いていった。
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