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狂い咲く花
第26章 二、昇り藤 - あなたは私の安らぎ

「はづ…き…」
やっと葉月の名前を呼ぶ。
「そう俺だよ。」
手をゆっくりと差し伸べる。
それでもまだ怖いのか身体が一瞬震えた。
「大丈夫だから…この手をとってごらん」
葉月の顔と手を交互に見ながら、恐る恐る手を出して葉月の手に触れる。
「怖くないだろう?」
差し出された手を握りしめる事はせずに、美弥の方から触らせる。
「この手は怖い?」
葉月の手を軽く握りしめながら、首を横に振った。
もう大丈夫だろうと大きく息を吐き緊張を解く。
「美弥…抱きしめてもいい?」
小さくコクリと頷いた。
ゆっくりと動いて、美弥に負担をかけさせないように、やさしく抱きしめた。
「もう…大丈夫だね」
背中をポンポンと叩きながら告げると、声を抑えながら泣き出した。
「ごめんな…離れるべきじゃなかった…」
葉月にしがみついている美弥を見て、両親は複雑な気持ちになる。
怯え切った美弥の心を癒せるのは葉月だけだろうと思ったが、葉月は麻耶の夫で蘭子の父親だと思うとどうしていいものかと考えてしまう。
「葉月…今晩は美弥についていてやってくれ」
どうするべきが一番なのかを考えて告げる。
「麻耶の所には俺が行こう。今日は美弥についていてやってくれ。夜中に起きた時にお前がいたほうがいいだろう」
「父さん…」
「麻耶には、先方での取引が長引いてお前だけ置いて帰ってきたことにしとくか…ここにいるって知ったら大雨のなかでも来そうだからな」
今の空気を壊すかのように楽しそうに笑った。

