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狂い咲く花
第26章 二、昇り藤 - あなたは私の安らぎ
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何度も目を覚ます美弥をいたわりながら朝を迎えた。
美弥が気になって眠れなかった葉月が眠りについたのは、美弥が落ち着き長い時を寝られるようになった朝方だった。
陽が昇っても、2人を気遣ってなのか母親が起こしに現れることはない。
抱きしめ合ってお互いの温もりだけを感じて、昨日の出来事が嘘のような時間が過ぎて行った。
最初に目を覚ましたのは美弥だった。
夜中に何度も起き、怯える自分を抱きしめ何度も名前を呼んで安心させてくれた事をはっきりと覚えていた。
この温もりがあったから、狂わずにすんだのだとはっきりと分かる。
もし、この手がなければどうなっていたかと思うと、また恐怖が蘇る。
「まだ震えているね…」
美弥の身体を引き寄せて身体を密着させた。
その行為に美弥の心はドキドキする。
「ずっと一緒にいてくれて…ありがとう」
「うん。…父さんが向こうに話をつけにいってくれているから美弥は何も心配しなくていいから…もう少し寝ようか」
「でも、もう明るいわよ」
昨日の雨が嘘のように上がり、陽が昇り明るかった。
「う~ん…俺がもう少しこのままでいたいんだけど?駄目」
抱きしめる腕に力を込めて伝えた。
「もうっ。葉月のばかっ」
そう言って、美弥は笑った。
「やっぱり、美弥は笑っている方がいいね。その笑顔が俺は好きだな」
額に口づけをした。
「だったら、笑ってないとね。葉月に嫌われないように」
「だな。笑っていてくれ。俺の傍で…もう少し寝よう」
そう告げて、2人はお互いの体温を感じながら深い眠りに落ちて行った。