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狂い咲く花
第26章 二、昇り藤 - あなたは私の安らぎ
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緊張と疲れからなのか一度も起きることなく、目覚めた時は夕方になろうとしている時刻だった。
その頃には父様も帰ってきており、夕食を食べたあとに話すことになった。
美弥の体調も心も少しは落ち着いたと言っても食事に箸が進むことはない。
ただ葉月の傍に寄り添って座っていた。
その光景を見ても2人は咎める事はしなかった。
「向こうの家に行ったらな、あいつはいなかったよ。昨日から帰ってきてないらしい…本人抜きで話すのもどうかと思ったんだがな。あいつ抜きで話をした。葉月から聞いたことを全て話したらな、いきなり土下座して謝りやがる。『申し訳ない』の一点張りでな。母親は泣きだすし…話し合いになったもんじゃなかった。最初から話合いする気もなかったがな…。今回の件で仕事にしても何にしても縁を切ってきた。本人に約束させられなかったのが悔しいが、美弥には近づかせるなと言うだけしかできなかった…一発ぐらい殴りたかったんだがな…悪いな。美弥」
何もできなかった自分を責めているのが手に取るように伝わった。
自分の為に、また辛い思いをさせてしまったと心が落ち込んでいく。
「父様…ありがとう…その気持ちだけで私は救われます」
いつものように無理して笑う。
その笑顔が痛々しくてならない。
「葉月…今晩も泊っていけ。…麻耶の事は心配するな。出かけるときに南和に会ってな。葉月が仕事で明日まで帰らないと言ったら、自分が2人の傍についてるっていいやがるから、任せることにした。あいつだったら人畜無害だからな。」
誰もが南和と麻耶の関係に気が付いていなかった。