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狂い咲く花
第27章 三、彼岸花 - 悲しき思い出





───…





秋も深まり紅い葉も地面に落ち始めた頃。
いつものように葉月は顔を出し、ただ美弥を後ろから抱きしめるだけの少ない時間を共に過ごしていた。
あの、美弥にとって悪夢の日から半年。
ようやく、夢を見なくてすむようになっていた。

「もう少ししたら雪が降ってくるのね」

「そうだね。美弥の温もりが今以上に必要な季節…」

「葉月ったら…。でも、人恋しくなる季節に葉月に触れられるって言うのは幸せなことね。きっと」

顔を上げて葉月を見つめる。
それは口づけの合図。
葉月の顔が動くと、美弥はそっと瞳を閉じた。
唇が重なり合い舌を絡ませる。
何度も何度も角度を変えながら、お互いの想いを口づけから読み取るように…。

「はぁ…時間が止まればいいのに」

唇が離れ、切なそうに美弥がつぶやく。
そう思う美弥の心がうれしくて葉月はまた、唇を重ねた。
時間が許す限り唇を重ね体温を感じ身体も心も満たされる。

「もうそろそろ行くよ…」

「そうね…麻耶と蘭子が待ってる…」

お互いに今の状況が良いとは思っていない。
これは麻耶への裏切りで決して犯してはいけない罪だということは分かっていた。
それでも、長年押し殺していた気持ちが通じ合えば、お互いを求める想いは止まることはない。

「はぁ…また来るよ…。美弥、俺は美弥だけを愛してる」

いつも最後に言う言葉。

「私も葉月だけを愛してる」

お互いに言葉で愛を確かめ合い、それぞれの生活に戻って行く。
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