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第27章 三、彼岸花　-　悲しき思い出

「あなたの心は、私の知っている人に良く似ています…」

美弥の胸の間に人差し指を軽く当てて、どこか悲しげで懐かしむ瞳で語る。

「だからでしょうね。私は…あなたにある人を重ねていました…」

目を伏せてその人を思っているかのようだった。
この人は何がいいたいのだろうと思いながら、美弥は幸信の話に耳を傾ける。

「想いを口に出せずにずっと苦しんで生きているあなたを見て、救ってあげたいと思った。それが私の彼女への償いと贖罪だと感じたんです。それなのに…贖罪といいながら、美弥と過ごす時間が楽しかった。楽しければ楽しいほど私の心は彼女に引きずられる…」

悲しげに話す幸信を見て話しに興味が沸いて来る。
だからと言って、幸信を許す気も恐怖心がなくなることはない。

「その方は…」

その一言に、幸信の瞳が揺れた。
目を細め、か細い声で告げた。

「亡くなりました…私の目の前で…」

その言葉に美弥は続ける言葉を失った。
その人は、幸信の愛する人と推測できた。
その彼女が目の前で亡くなった。
ただ病気や事故で亡くなったわけではないことは安易に予想できた。

「あなたに良く似ていた。相手のことを思って、自分の心に蓋をして…壊れていった。最後には私と彼との区別もつかなかった」

「彼…？」

美弥の言葉に、フッと幸信は笑う。
その笑みの意味は分からなかった。