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狂い咲く花
第27章 三、彼岸花 - 悲しき思い出
『ずっと好きでした。兄のことをまだ好きなことも忘れられないことも分かっています。そのうえで、僕はあなたを守りたい。』

『それは…ユキに悪いわ…でも、その気持ちはうれしい…ありがとう』

そんな返事が返ってくることも分かっていました。
ですから、次男坊という立場を使って好き放題に彼女と共に過ごすことにしたんです。
それでもずっと私の将来を心配してくれていました。

『申し訳ない』

『ユキの人生はユキのモノだから。私に囚われないで』

『私より、ユキにふさわしい人はきっといるわ』

何度も言われました。
それでも私は時間が許す限り彼女の傍にいて、何をするでもなく楽しい時間を過ごしていたのですよ。
ただ一緒にいるだけで、笑顔で毎日を過ごしてくれさえすれば私は幸せでした。
その幸せがずっと続くものだと思っていました…
私が彼女の元を訪れない時に、兄は彼女と会っていたのです。
兄も彼女の事を忘れられず、かと言って婚約破棄することもできずに苦しみ、密会していました。
それを知ったからと言って、どうするつもりもありません。
彼女の心の中にはずっと兄がいましたから。
その少しの時間だけでも彼女の心が癒されるならと黙認していました。
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