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狂い咲く花
第27章 三、彼岸花 - 悲しき思い出
───…
私と彼女が会っていることは兄も知っていました。
兄も私の彼女に対する気持ちも知っていたはずです。
それでも会わずにはいられないほど2人は愛し合っていたのだと思います。
そこに私の入り込める場所なんてない…その想いごと好きになるしかなかったのです。だけど、私が黙認したのが悲劇のはじまりでした。
兄のお見合いのお相手はまだ13歳でしたから、16歳になるまでは結婚はなされません。
13歳なりに何かを感じ取ったのでしょうね。
私と兄の知らないところで兄の婚約者は彼女に接触していました。
直接的に何かをされたとかはなかったようですが、精神的に追い詰められていたのは確かでした。
だんだんと笑顔がなくなり、私に会おうともしなくなりました。
私だけならまだしも、兄とさえ会うことがなくなったんです。
ただ私は見ていることしかできなかった。
私が16歳になろうとしていた時でした。
久しぶりに彼女の元を訪れました。
彼女の姿を見て驚きました。
彼女のお腹は大きく、身籠っていたんです。
誰の子かは絶対に言わないんです。
だけど、そのお腹の子を愛おしそうに撫でる彼女を見て、兄の子なんだと気が付きました。
嵐の晩に返ってこなかった日があったのですが、たぶんその時に兄は彼女を抱いたのだと思います。
しかし、それが公になると兄の立場も、それ以上に家の立場も危うくなる。
彼女はそう思ったのでしょうね。
私が会いに行った次の日には彼女の姿はなかった。
私に知られたら兄に知られると思ったのでしょう。
だから、身重の身体で姿を消した。