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狂い咲く花
第27章 三、彼岸花 - 悲しき思い出
私は探しました。
毎日いろいろなところを走り回り…そしてやっと見つけたんです。
お腹もおおきくなり、ほどなくして産まれる頃だったと思います。

『私の子供として産んでください』

私はお願いしました。
だけど、もう、彼女の目には私は写らなかった。

『輝彦さん…私が子供を産めば、あなたの立場が危うくなります…あの一晩の出来事だけが私に生きる望みをくれたのです…そして思い出だけではなくあなたとの絆を残してくださいました…私はそれだけで十分です。どうか、あなたは自分の幸せを大事にしてください』

私と兄の区別さえついていませんでした。
それ程までに、追い詰められていたんです。
傍にいることを拒む彼女でしたから、私は近寄らず、しかし遠くから見守ることにしました。
子供が生まれたら、私ができる事はなんでもしてあげようと。
しかし、ある日の朝方、彼女の悲鳴が聞こえました。
急いで駆けつけると、彼女の足から滴る血の海を見て唖然としました。
それが何を意味するのか…
発狂し泣き叫ぶ彼女を抱きしめて宥めようとしても私にはできなかった。
私の言葉など届かなかった…

『ごめんなさい…ごめんなさい…輝彦さんの子供を…ごめんなさい…ごめんなさい…』

何度も何度も謝るのです。
そこにいない兄に。
やはり、彼女の心には入り込む隙は無いと抱きしめている手を緩めた瞬間に、彼女は私を押しのけて外に出ていったんです。
力なく座り込んだ私が我に返ったのは少ししてから…
今の彼女を一人にはできないと思った私は追いかけました。
探し出すのは簡単でした。
血の跡を追えばよかったんですから。
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