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狂い咲く花
第27章 三、彼岸花 - 悲しき思い出
やっと彼女に追いついた先は…崖でした。
そこで、久しぶりに私の名前を呼んでくれました。
彼女の瞳に私が映ったんです。
『ユキ。ごめんね…あなたの気持ちはうれしかった。けど、輝彦さんを忘れることができなかった…この子もダメにしてしまって…もう生きていく気力もなくなってしまった』
『まって…僕のために死を選ばないで』
『ごめんね…』
『お願いだから…』
私は手を差し伸べました。
しかし、その手を取ることはなかった。
『ユキ…本当にごめんなさい。こんな道を選んでしまった私を許して…』
『待って…逝かないで』
───…
「私は、無理やりにでも引きもどそうと一歩踏み出しました。それと同時に彼女も一歩後ろに下がり…私の目の前で落ちて行きました…それが彼女を見た最後でした」
涙を流しながら話を続ける幸信に自分の姿を重ね合わせる。
彼の優しさが、そして彼を狂わせてしまった思いも理解できてしまった美弥は、幸信を抱きしめた。
困惑する幸信に美弥は告げる。
「幸信さんは、私に彼女を重ねたと言いましたけど、私にはあなたの想いと重なっているように思います…そして、きっと私の想いより遥かに深い愛情を感じました。」
「美弥…」
幸信の腕が美弥の身体に絡まり力強く、しかし美弥に負担にならない力で抱きしめる。
「幸信さんのせいではないですよ。幸信さんがいなければ彼女はもっとつらい思いをしていたはずです。」