パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第27章 三、彼岸花　-　悲しき思い出

「そうでしょうか？私は無力でした。死にゆく彼女をただみているだけしかできなかった…。そして後を追うことも出来ずにいます…」

美弥の肩に顔を埋めて幸信は告げる。

「一緒に死にたかった…」

その言葉に想いの強さを知った。
死を軽んじるつもりは美弥にはない。
しかし、そこまで想い続ける幸信の想いの重さと愛情を感じた。

「死してもなお、私の心を離さないのです。いつでも彼女の元に行く準備はできています…そんな時にあなたに出会った。同じ心と同じ思いを持つあなたに…あなたの心が救えれば私も救われるのではないかと。でもあなたは私ではなく葉月さんを選んだ…」

その一言に、また変貌するのではないかと美弥の身体は震えた。

「大丈夫です…あなたと彼女は違う…。…分かっていても…あの時はあの時の感情と重なって…」

顔を上げて、しっかりと瞳で見つめる。

「傷つけてしまいましたね…私が愛する人は私によって傷つけられる…」

その切ない思いに同調する。

「大丈夫です…そのおかげで…私は葉月の心を知ることができました。自分の想いを口にすることができました。あんなことがなければ…決して手に入れられない幸せな時を手にいられたんです…だから、そんなに自分を責めないでください。」

その美弥の言葉に幸信は驚き、そして救われる。

「ありがとう…」

幸信が儚げに笑う。
その笑顔が最後のような気がして聞かずにはいられなかった。