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狂い咲く花
第28章 三、クロッカス - 愛をもう一度(紫)
「さっきね…幸信さんが会いにきたの」
その一言で葉月の顔が険しくなる。
握られた手は離されて、力強く肩を掴まれ低い声で聞く。
「何かされたのか?」
心配している顔と彼に対しての怒りの顔が入り混じっていた。
「大丈夫…ただ話しただけだから」
「大丈夫って…あの笑顔に騙されてただろう…美弥も俺も…」
肩を握っている手が震えているのが美弥には伝わった。
もう、あんな思いはしてほしくないと願う葉月の心の表れでもあった。
「葉月落ち着いてよ…本当に大丈夫。たぶん、二度と会いに来ることはないと思うから。ねっ?」
美弥の落ち着いた言葉に葉月も自分の心を落ち着かせる。
力強く握りしめていた肩から手を離し、隣に座って美弥の肩に頭を預ける。
「俺…もうあんな思いしたくないから…美弥にもさせたくない」
「ありがとう…だけどね。幸信さんはもう何もしないから大丈夫。…彼とたくさん話をしたの。その中で彼の悲しみと怒りと絶望を見た気がした…」
そう言って、幸信が話したことを全て葉月に伝える。
葉月は驚きながら、それでいて切ない顔をしながら聞いた。
葉月もまた同じ思いを抱いていた過去と重ね合わせていた。
「初めは彼を見て怖かった…でも話を聞いているうちに同じ思いで苦しんでいたんだって思ったら…もしかしたら自分の未来の姿だったのかも知れないと思ったら、許してた…」
「けど、俺たちは違う。気持ちを言葉にしてお互いに伝えられてる。俺と美弥の未来はきっと大丈夫」