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狂い咲く花
第28章 三、クロッカス - 愛をもう一度(紫)

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「姉様?」

月夜を眺めていて麻耶の存在に気が付かなかった美弥は、罪悪感からなのか身体を硬直させた。

「どっ…どうしたの?」

どうしても、声が上擦ってしまう。

「葉月こなかった?喧嘩して出て行っちゃったの」

蘭子の手を引きながらゆっくりと歩いてくる。
暗闇で顔がよく見えなかったが、顔を合わせるのが気まずかった。

「そうなの…。実家に帰るって言っていたけど…」

「え~…そんなぁ…。ねぇ、姉様。今日は蘭子と泊まっていい?」

蘭子を美弥の膝の上に座らせ甘えながら聞かれると駄目とは言えない。

「いいけど…」

あまり一緒にいたくない美弥は渋りながら返事をする。
先ほどまで唇を重ねていた葉月とのことを思い出すと、今この空間が苦痛だった。
そんな美弥の想いなど知らずに、麻耶は後ろから美弥を抱きしめる。

「ふふふっ。姉様と一緒なんて久しぶり…葉月と結婚して以来かなぁ…」

甘えるように抱き付いてくる麻耶を美弥も懐かしく思う。
まだ麻耶が結婚する前の2人に戻った感じがしていた。
身体をゆすり、背中に麻耶の体重を感じれば、懐かしい昔が蘇ってくる。
まだ何も知らない仲のいい姉妹だった時の事を…

「姉様から…葉月の匂いがする…」

クンクンと美弥の首筋を匂いながら麻耶は不思議そうに聞く。

「そっ…それはっ…」

動揺して言葉にならない。
どうしたらいいのかと視線が泳いだ。

「姉様の膝の上に蘭子がいるからか」

1人納得したのか、クスリと笑った。
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