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狂い咲く花
第28章 三、クロッカス - 愛をもう一度(紫)
ふたりは、美弥が育てている畑の横にある物置の中に入った。
中には畑で使う道具が所狭しと置かれていた。
少し道具を片付けると2人が座るには丁度いい空間ができ、そこに美弥を座らせて美弥の手を握る。

「ゆっくりでいいから、美弥が思った事聞かせて…一人で悩んで欲しくないから」

優しい葉月の言葉に美弥は思っていることを口にする。

「麻耶と一緒に寝たの…昔に戻ったみたいだった…昔みたいなあどけない笑顔を見たら…私がこれからしようとしていることが麻耶を傷つけて裏切る行為なんだって思ったら…あの笑顔を奪ってしまうと思ったら…」

「後悔してる?」

美弥の言葉を引き継いで葉月が尋ねる。
葉月を握っている手を握りしめて首を横に振る。

「後悔はしてない…してないけど…苦しいの…麻耶を傷つけて泣かせてしまうと思うと…」

今にも泣き出しそうな美弥を見て葉月の心が熱くなる。
全ての悲しみから解き放たれるのはいつのことだろうかと葉月は思う。

「全て、俺の責任だよ…美弥の事を忘れられなった俺の責任…必死に隠そうとしていた美弥の心を開いてしまった俺の責任。…美弥が俺の傍で笑っていてくれるのなら、麻耶の悲しみも苦しみも憎しみも全て俺が引き受けるから…」

握られている手を解いて、美弥の顔に両手を添えて自分の方に顔を向けさせる。

「だから、笑っていてほしい…」

「笑っていて…いいの?」

一筋の涙が美弥の頬をつたう。
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