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狂い咲く花
第29章 三、水仙 - 自己愛
蘭子の背中を擦りながら歩くうちに、泣き疲れたのか美弥の腕の中で眠りについていた。
2歳も過ぎれば体重も増え、眠りにつくと重さも増す。
何度も持ち上げながら麻耶の家に向かった。

「麻耶?」

玄関のドアを開けて声を掛けても返事が返ってくることはなかった。
まだ帰っていないのかと勝手に上がり、蘭子を布団に寝かしつける。
一瞬目を覚ますが一緒に横になっていると直ぐにまた眠りにつき、そのまま美弥も一緒に眠りに落ちていった。
どれくらい時間がたったのか。
陽が沈みかけたころに麻耶によって起こされた。

「ごめん…蘭子と一緒に寝ちゃったみたい」

「遅くなっちゃってごめんね。でも今日はありがとう」

蘭子の顔を覗きこむ麻耶は母親の顔をしていた。
何時頃から、こんな表情をするようになったのだろうと美弥は麻耶の成長に驚いていた。

「暗くなるから、そろそろ帰るね」

「葉月が帰ってくるなら送ってもらうんだけど…今日も遅いかな??また実家かもしれないけど」

昨日の事を思い出して麻耶の表情が曇る。
帰ってくることは伝えてあったが、帰って来てから何を話すのかを知っている美弥は何も言えなかった。

「本当に暗くなるから帰るね。…また蘭子を連れていらっしゃいね」

気まずさに耐えきれなくなった美弥が口を開いた。

「そうする…姉様気を付けてね」

「じゃあね」

軽く手を振って麻耶の家を出た。
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