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狂い咲く花
第30章 三、莢蒾 - 無視したら私は死にます
「これは…」

良く理解できてない美弥は2人の男性を見比べながら声を上げた。

「お待ちしていましたよ。」

この家の住人らしい人物が、しゃがみこんで美弥に声をかける。

「えっ…この家の方…ですか?…私を待っていた?」

彼の言葉に戸惑う。

「あなたが…美弥が知っている住人は半年前に亡くなっていますよ。私はただここを借りているだけ?」

「勝手にね」

泰邦が言葉を引き継ぎ、2人は顔を見合わせ面白そうに笑った。

「…これからどうします?」

泰邦が住人らしき人物にどうするか聞く。
どうするとはなんだろうかと美弥は漠然と考えた。
自分の身の危険など微塵にも感じてはいなかった。

「まずは…自己紹介から?…私は宝賀(ほうが)と申します。」

住人は宝賀と名乗った。
その流れで美弥も名乗ってしまう。

「…美弥…と申します…」

美弥が名乗ると宝賀は高らかに笑い出した。
その様子を見て美弥は意味が分からずただ見つめることしかできなかった。

「これは失敬…まさか名乗られるとは思っていなかったので…これは合意ということでいいのかな?」

宝賀が美弥の顔を人差し指でなぞりながら告げた。
その指の動きに嫌悪感が沸き起こり、幸信に襲われそうになった恐怖が蘇る。

「かっ…帰ります」

慌てて立ち上がりその場を離れようとした途端に、腕を引っ張られて、宝賀の腕の中に倒れ込んだ。

「美弥は積極的だ。なぁ。泰邦」
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