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狂い咲く花
第32章 三、風信子 – 悲哀
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次の日の朝。
「今日もいつもの時間?」
今日も仕事に行く前に麻耶は擦り寄りながら甘える。
「今日は少し遅くなりそうなんだ…待っていられる?必ず麻耶の元に戻ってくるから」
優しく抱きしめて、いつものように口づけを交わす。
麻耶が満足するまで舌を絡めた。
いつも以上に長く激しく求めてくる麻耶を見て無理だろうかと半ば諦めていた。
満足できたのか麻耶の方から唇を離す。
「葉月が帰ってくるの待ってるね…だからちゃんと帰ってきて」
「もちろん…俺の帰る場所はここだよ」
麻耶の額に口づけをして葉月は仕事に向かった。
それを見えなくなるまで送り続ける麻耶は健気な奥さんとして皆の目に映る。
「いつからあんな口づけをするようになったの?」
後ろから声を掛けられ麻耶の身体はビクッと跳ね硬直した。
何時にも増して低い声に振り返れずにいた。
そんな麻耶を見て、南和は後ろから抱き付いて肩に顎を乗せて冷ややかに聞く。
「僕が来たらまずかった??」
黙って小さく頭を横に振る。
耳に息がかかるようにわざと話した。
「だったら、どうして強張ってるの?…あんな激しい口づけ見られたから?」