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狂い咲く花
第32章 三、風信子 – 悲哀
2人の関係性の変化と、その傷と、傷の理由を言わない麻耶に南和は言いようのない不安が押し寄せてくる。
この10日の間に何かあったのかと、自分の知らないところで麻耶が泣いたのではないかと思うといたたまれなかった。

「教えて…麻耶の事は全部知っておきたい…僕のいないところで泣かないで」

南和の優しい言葉と暖かさに、麻耶は南和の胸に顔を埋めて少しずつ話していく。
葉月に別れを切り出されたこと。
知らず知らずのうちに包丁を胸に刺して、そうまでして自分の元に留まって欲しかったこと。
愛の言葉と口づけをしてくれたこと。
それらを全て南和に話していく。
そして最後に

「求めちゃ駄目だっていう約束を破った麻耶は、いらない子…だよね…」

その声が、一層震えているのが分かった。

「そうだね…求めないって約束したよね。だけど、その言葉だけで僕の事諦められるの?約束破ったからって「ごめんなさい。私いらない子だよね。」で終われるの?麻耶の僕への気持ちはそんな簡単な物?」

「違う…そうじゃない…」

イヤイヤと駄々をこねるように首を振って、南和の着物を握りしめた。

「だったらね。否定の言葉ではなくて、僕を求めてごらん。簡単じゃないって思わせて」

南和の言葉に麻耶は考える。
だけど、南和の欲しい言葉が麻耶には分からなかった。
何をどうすればいいのか全く分からずにいた。
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