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狂い咲く花
第33章 三、ヒマラヤ雪ノ下 - 秘めた感情
美弥は重い足で部屋に戻ろうと葉月の横を素通りしようとした時、腕を取られて葉月に抱きしめられた。
美弥は慌てるでもなく冷たく言い放つ。

「何?」

「何があった?俺が来ない間に…美弥の身になにが起こった?」

抱きしめる腕が震えているのが分かる。
本当に心配してくれているのも伝わる。
だけど、もう全ては遅かったと美弥は思う
もっと早ければまだ救いようがあった、だけど何度も抱かれて汚された自分が葉月の傍にいることは叶わないと全てをあきらめていた。
ここにきても、まだ葉月が裏切ったことに対して恨むことをしない美弥だった。

「葉月には関係ない…」

「関係ないわけないだろう」

「なぜ?」

「なぜって…愛しているお前の事を心配するのは当たり前だろう?」

「誰が誰を愛しているの?」

美弥の質問に素直に答えていた葉月は、その一言で言いようのない不安が込み上げてくる。

「美弥?」

抱きしめている腕を離し、美弥の目を覗き込む。
そこには悲しみに染まる目が葉月を見つめていた。

「誰が誰を愛しているの?」

「どうして聞くの?俺が美弥を愛していることは分かっているだろう?」

愛おしそうに手を頬に当て、美弥が欲しい言葉を口にする。

「私を愛している?…そして麻耶も愛している?」

そこに麻耶の名前が出て困惑する。
美弥が何を言いたいのか理解できなかった。
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