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狂い咲く花
第35章 三、桔梗 - 深い愛
──…
───…
────…
「はぁ…」
全てを話し終えると父様は大きな溜息をつく。
葉月は何を言われるか、それとも殴られるのかと覚悟をしていた。
しかし、父様は何も言わなかった。
ただ自分の中で聞いた話を整理しているのか眉間に皺を寄せて黙っていた。
その沈黙が葉月には辛かった。
「父さん…」
葉月の方から声を掛ける。
その声に父様は顔を上げ、優しい瞳で葉月を見つめた。
膝の上に添えていた手を上げて、葉月の頭をガシガシとする。
「…お前も、辛かったな」
思いもよらない言葉に目を見開く。
自分の娘を不幸にした男にかける言葉とは思わなかった。
「誰が悪いわけでもない。少しのすれ違いと思いやりが、ここまで拗らせた…だからお前のせいじゃない。」
「だけど…俺が原因を作った。俺さえいなければ美弥を傷つけることなんてなかった。俺さえいなければ!」
葉月が言い終わらないうちに、父様は葉月を抱きしめた。
背中をバンバンと何度も強く叩きながら愛情を示す。
「俺さえいなければとか言うな。いいか?過去は変えられなくても未来は変えられるんだぞ。間違ったと思うなら気が付いたところからやり直せば良い。人生は何度だってやり直しがきくんだ。お前は若い。何度だってやり直しが効く。…お前は今どうしたい?何がしたい」
父様の言葉に涙が溢れてくる。
一つ一つの言葉がうれしかった。
どこまでも深い愛情に感謝した。
「俺…美弥と一緒になりたい…麻耶には申し訳ないけど…もう美弥を手放したくない…」