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狂い咲く花
第35章 三、桔梗 - 深い愛





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葉月が目覚めたのは昼を少し過ぎた頃だった。
目を覚まし、直ぐには自分がどこにいるのか分からなかった。
辺りを見回し、そこが美弥の部屋だと気が付いた瞬間には部屋を飛び出し隣の家に裸足で駆けていた。

「父さん、美弥は?」

玄関から入り大声を上げながら奥に進んでいく。
居間に入ると、そこには美弥ではなく麻耶がいた。

「葉月~~」

葉月の顔を見た途端に麻耶は葉月に飛びつく。
それをいつものように受け止めてはみたものの、もう以前のように抱きしめることはできなかった。

「ごめん…麻耶…離れて?」

いつものように優しく語りかける。
それでもイヤイヤと顔を横に振りながらしがみつく。
無理やり引きはがせない葉月は、それ以上なにも出来ずにいた。

「麻耶。さっきも言った通り、父様と葉月ちゃんは今からおでかけなんだから無理言っちゃ駄目よ」

母様が立ち上がり、麻耶の手を葉月から引き剥がした。

「だから、今日は母様と一緒にすごしましょう?久しぶりに麻耶と遊びたいわ。母様は」

頭をポンポンと叩いて昔のように子供扱いすれば、麻耶の興味は自然と母様に向いた。

「甘えてもいいの?」

「いいわよ…蘭子は眠っているし、母様の膝の上に座ってお話する?」

「するする~。お膝の上に乗るの!母様大好き」

麻耶が上機嫌になったのを見届けると、父様と葉月は静かに家を出ていった。
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