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狂い咲く花
第36章 三、吾亦紅 – 変化
「仕事の帰り?」

「まあな。仕事しないと生きていけないからな…こればっかりは仕方がない…それよりお前たちはどうした?」

2人に追いつき並んで歩き出す。
麻耶はそっと南和から離れ、葉月の隣に並び袖を握った。
その行動に、今でも一番は葉月なんだと思い知る。

「美弥の近況聞こうと思って行ったらね。おばさんから麻耶を外に連れ出してほしいって頼まれて、散歩した帰り」

いつも通り上手く嘘をつく。
父様は麻耶の顔を覗き、大きな手で頭を撫でる。

「楽しかったか?」

父様が声を掛けると麻耶は小さく頷いた。
その様子に父様も葉月も心を撫でおろしほっとする。

「南和…話があるからちょっといいかな?」

葉月は南和に言いながら父様の顔をチラリと見た。
その視線を感じた父様は、全てを理解した上で麻耶を連れて先に帰ることにした。
並んで帰る2人の後ろ姿を見ながら葉月は心の中で麻耶に別れを告げた。

「俺たちではどうしようもできなかったのに、お前といると麻耶は笑顔になれるんだな。…もし父さんと母さんだけではどうしようもなくなったときには麻耶の力になって欲しいんだ」

唐突に言われた南和は、葉月が言わんとすることが分からなかった。

「俺は…」

消えていく2人の背中を見つめた。
その視線を追って南和も目線を向ける。
その先には父様に寄り添って歩く麻耶の姿があった。

「俺は、麻耶と別れて美弥と一緒になる」

はっきりと告げた。
そこには迷いなどない。
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