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狂い咲く花
第38章 三、緋衣草 - 家族愛





───…





「葉月です。入ってもいいですか?」

「葉月か。入りなさい。」

障子の向こうから和尚の声が聞こえ、葉月は美弥を抱いたまま障子を開けて中にはいった。

「美弥…」

母様が駆け寄り、美弥の頬に触れた。

「母様…ごめん…なさい…」

涙を流す母様に美弥は小さい声で謝る。
母様はただ頭を横に振るだけで、何も言葉にはできなかった。

「葉月、障子を閉めて座りなさい。美弥が寒かろう」

和尚に促され葉月は一歩中に入り障子を閉めた。
そのまま美弥を抱きしめたまま座ることを躊躇し、少し考えた末に美弥を父様の腕の中に預けた。
不安そうに見つめる美弥に葉月は優しく微笑む。

「今日ぐらいは、父さんと母さんに甘えな。俺とはそのうちずっと一緒にいられるんだから」

美弥は小さく頷いて、葉月の首から腕を離し父様の首に腕を回して抱き付いた。

「父様…ごめんなさい…」

「何も言うな。お前が俺たちの元に戻ってきてくれただけでいい。生きていてくれてよかった…」

父様の大きな手が美弥の頭を撫で、その横で母様の優しい手が美弥の背中を擦った。
それが懐かしてくうれしくて、子供のように声を出して泣いた。

「怖かったのか??」

「もう大丈夫よ。父様も母様もいるから」

2人は泣いている本当の理由を知らない。
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