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狂い咲く花
第43章 四、瑠璃溝隠 - 悪意
男の手は美弥の首にかかり、声をあげた葉月に気が付くことはなかった。
泰邦だけが気が付き、慌てて逃げ出した。
葉月と父様は男めがけて走り出した。
近づくに連れて、それが誰なのか顔が見える。
笑いながら美弥の首を絞めているのは、他でもない幼馴染の南和だった。
葉月は信じられないと思いながら体当たりで南和にぶつかった。
その勢いで南和の身体は吹き飛ばされ、美弥の首から手が離れた。

「俺はあいつを掴まえる。」

父様は逃げ出した泰邦を追う。
圧迫する物がなくなった美弥の身体は酸素を求めて咳込みながら酸素を取りこむ。
葉月は美弥の元に戻り抱き起し、後ろ手に縛られている帯を解いて手を開放する。
何度も大きく呼吸をしながら葉月にしがみついた。
死の恐怖から解放された美弥は、まだ恐怖の中にいる。
そして南和が口にした麻耶の本心が心を抉る。

「なんで、邪魔をするのさ。麻耶が願うことをどうして邪魔する?」

ヨロヨロと立ち上がり、南和はうわ言のように繰り返す。
そこには2人が知っている南和はいなかった。
何かに取り憑かれたように美弥に迫る。
葉月は南和から美弥を庇うように背中を向け対峙する。
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