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狂い咲く花
第44章 四、海蘭擬 - 偽りのない心
───…
「おはよう。麻耶」
目を覚ました麻耶に気が付き母様が麻耶に言葉をかけた。
麻耶は布団の中でモゾモゾと動き、いつものように中々起きようとしない。
しばらくすると、布団から顔を出して辺りを見渡す。
「ねぇ、母様。姉様は?」
ここにはいない美弥を探す。
あの忌まわしい夜から10日たった今でも、美弥のいない生活を認められずにいた。
「姉様はいないわよ…覚えていない?」
母様が麻耶に告げても、麻耶は何の事を言われているのか分からない素振りをする。
「あなたが仕出かしたこと…南和ちゃんに頼んで美弥を…」
いつもそこまで言って母様は次の言葉を言えないでいた。
「犯させた」「殺そうとした」の言葉を麻耶に告げることはできなかった。
麻耶は顔を強張らせ唇を噛みしめる。
その表情に全てを忘れていないことは分かる。
しかし、それを麻耶の心は認められないでいた。
「それよりも、母様。麻耶、お腹すいちゃった。」
いつも、話をそらそうとする。
いつもは、「そうね」と大切な話を避けようとする母様も今日はきちんと話そうと決めていた。
「麻耶…きちんとお話しましょう…。逃げては駄目…分かるわよね」
麻耶の手を取り、真正面から見据えて切り出す。