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狂い咲く花
第45章 四、吾亦紅 - 移りゆく日々
「時間もあるし…少し歩こうか?」

時間がある時は、美弥と外を歩く。
美弥の腰に手を回し、寄り添うようにして歩く2人は仲睦まじい恋人のようだった。
その目に映るものがなくとも、自然の恵みは届いていると信じ葉月は外に連れ出した。
西に陽が沈みかけ辺りは真っ赤に染まる。
沈みゆく太陽を見ながら2人は時を過ごす。
その朱が2人を包み、盛り上がっていた心を思い出した。

「赤々と…燃える様な恋をしてたんだよ…」

ポロリと口から零れ出る言葉。
何を言っているのだろうかと苦笑する。
苦笑しながら沈む夕日を、ただ眺めていた。




「きれい…」




眺めていると、美弥の口から言葉がこぼれる。

「…美…弥…?」

聞きたかった美弥の声に驚き、美弥の名前を呼んでも、その先が続くことはなかった。
ただ沈む夕日を眺め、いつもの美弥だった。
葉月は声を荒げて呼ぶことはせずに、そっと抱きしめた。

「声を…声を聞かせてくれてありがとう…。また戻っておいで」

強く願えば、願いが叶う。
声を聞きたいと強く願ったから一言だけ声を発した。
焦るなと和尚は言った。
少しずつ、思い出してくれればいいと美弥の温もりを感じながら葉月は思う。
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