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狂い咲く花
第45章 四、吾亦紅 - 移りゆく日々
───…
麻耶は頻繁に美弥の元に通うようになっていた。
自分のせいで心を閉ざした美弥を甲斐甲斐しくも面倒をみる。
それが麻耶ができる唯一の贖罪だった。
麻耶がいる時は、麻耶に美弥の面倒を見させ、葉月は子供たちに勉強を教えていた。
その近くでは方不明になった南和が2人に何もしないように、寺の者たちが目を光らせていた。
しかし、それは取り越し苦労のようで、南和が現れることはない。
「今日も暑いね」
美弥の膝で眠っている蘭子をうちわで風を送りながら麻耶が静かに告げる。
美弥の手が少しだけだが、優しく蘭子を撫でていた。
無意識のうちに体を揺らし、優しく撫でる。
何時の頃からが、蘭子を抱かせるとそういう動きをするようになっていた。
ただそれだけだったが少しずつ今の世と繋がっていた。
「暑かろう…これでも食べないさい」
和尚がスイカを手にふたりの元を訪れる。
麻耶はお礼を言って、美弥の手にスイカをもたせた。
美弥はゆっくりと口に運び一口食べる。
その表情が変わることはなかった。
「麻耶も食べなさい」
スイカの汁がこぼれないように見守っている麻耶に和尚は声を掛けた。
何をするにも美弥を一番に考えて、麻耶自身は後回しにする。
今の状況になって麻耶が見せた変化でもあった。
一番ではないと嫌な麻耶。
中心にいないと嫌な麻耶が自分より相手を思う。
それが、麻耶の麻耶なりの償いでもある。