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狂い咲く花
第45章 四、吾亦紅 - 移りゆく日々
───…
今日もいつものように廊下で美弥が外を眺めいた。
視野の端で美弥を捉えながら、葉月は授業を進める。
子供たちは大きな声をあげながら手を挙げ、誰に答えてもらおうかと考えていると、外から子供の泣き声が聞こえた。
廊下に出て声がする方を見ると富子が妹のフミをおぶって立っていた。
「先生…フミが泣いちゃうから駄目だよね…」
背中で泣いているフミをあやしながら寂しそうに聞いた。
葉月が答える前に、他の子供たちが声をあげる。
「フミが泣いちゃうと勉強できないよ」
「赤ちゃん連れてくるなよ」
冷たい言葉を富子に浴びせ室内がざわめく。
人一倍勉強が好きな富子。
しかし、妹の面倒と畑仕事でここに来ることも出来ずにいた。
「静かにして…友達だろう?なんでそんな酷い事言うんだ?」
静かにするように言い、子供たちに聞いた。
「だって…フミが泣くと集中できないもん」
誰かが口を開いた。
「あのなぁ…ここは勉強をする所だ。集中できないって言う気持ちもわかる。けどな、それだけを教えてるわけじゃない。」
「じゃあ、他に何を教えてるの?」
違う生徒が口を開く。
「ずっと、教えてきたはずだよ。相手を思う心、相手を慈しむ心。自然を愛する心。学んで来たはずだよ…フミが泣けばうるさいよね。帰れって言うのは簡単だ。けど、大切な友達だよね。どうするのが一番か考えてもいいんじゃないのか?考えもせずに答えを出すの?」