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狂い咲く花
第46章 四、朝顔 – 硬い絆
愛らしい声で父様の名前を呼ぶ。
いつも聞いていた声。
待ち望んでいた声。
父様はゆっくりと足を進め、美弥の前に跪いて手を伸ばした。
その手が美弥の頬に触れた瞬間、父様は美弥を力強く抱きしめた。
何も言わず、何も語らず、大粒の涙を流しながら強く抱きしめる。
美弥も父様の背中に手を回して、大きな背中を感じホッとする。
葉月とは違う安心感がそこにはあった。

「美弥…」

あとに続いた母様が美弥の名前を呼んだ。
その声に気がついた美弥は片手を母様に伸ばし、抱きしめて欲しいと無言で伝える。
それは確実に伝わり、父様と反対側に廻り美弥を抱きしめた。

「来てくれて…ありがとう」

それだけを口にする。
暫くの間3人は抱き合いお互いの存在を確かめる。
父様と母様が美弥から離れ、真正面から美弥を見つめ、2人の手が優しく美弥の頬に触れ愛おしそうに撫でた

「良く戻ったな…」

「おかえりなさい」

父様と母様がそれぞれ言葉をかけると美弥は静かに頷いて微笑む。
それは幸せな時間。
家族が楽しく過ごしていた懐かしく心温まる時間だった。

「あねたま…」

蘭子が近寄り、美弥の事を「あねたま」と呼ぶ。

「…蘭子?」

2年ぶりに見る蘭子は大きくなっていた。
にっこりと笑う顔が昔と変わらず可愛かった。
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