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狂い咲く花
第8章 一、榛 - 過ち
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「あらあらっ…美弥ったら葉月ちゃんには甘えるのね」
葉月の腕の中で寝ている美弥を見て微笑む。
襖の向こうから声を掛けられたが、身動き取れない葉月は動く事でも出来ずに恥ずかしい姿を母様に見られてしまった。
「あの…これは…」
言い訳をしようとするが何と言っていいのか分からない。
結婚前の男女が抱き合っている場面を見て憤慨しない親はいない。
『結婚前の娘に傷をつけて』と怒られても仕方がないことだと覚悟していたけれど母様は笑って許してくれる。
「いいのいいの。そのままでいいわよ。…お粥置いておくから、美弥が起きたら食べさせてあげてね」
出来たばかりのお粥を葉月の横に運ぶと、美弥の顔を一目確認して出て行った。
母様もふたりが将来を誓い合った仲だと気が付いていた。
この家の人たちはみな知っていて知らないふりをしてくれている。
きちんと自分たちの口で告げるその時まで。
「んんっ…」
美弥が身体を少し動かし微かに瞼を開ける。
気怠そうに寄りかかったまま浅い息を繰り返す。
「美弥…?」
名前を呼んでも目を葉月に向けるだけで動こうとしない。
完全に先ほどより悪くなっているのが分かった。
「美弥…水飲める?」
ゆっくりと首を横に振り、その気力さえなさそうだった。
さすがにまずいと思った葉月は水を口に含み美弥の唇に押し当てて流しこむ。
ごくんっ
と美弥の喉を流れていく。