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狂い咲く花
第47章 四、アリウム – 深い悲しみ
───…
「今日ね。今日ね」
家に戻った蘭子は興奮しているのか言葉が中々でてこない。
麻耶の傍らで寺での出来事を話そうと一生懸命だった。
「おばあちゃまと一緒で楽しかった?」
「うん。美弥姉様もいたしね。鉄斎さんにも抱っこしてもらったの。お寺にいる人みんな好き」
「そう…よかったね」
興奮している蘭子と違って、麻耶の言葉は静かだった。
その反応が蘭子には面白くない。
「母様なんて、嫌い…」
拗ねたようにつぶやくと、麻耶は寂しそうな表情を見せ微笑んだ。
「そう…」
一言だけ告げて口を噤む。
それが蘭子は嫌いだった。
何を言っても反応が薄い麻耶が嫌でたまらなかった。
だから、心にもないことを言ってしまう。
もっと困らせ、寂しそうな顔をさせると分かっていても、自分の想いを押し留めることなどできなかった。
「大っ嫌い!!」
容赦なく、冷たい言葉を浴びせる。
幼いから、その言葉の威力を知らない。
蘭子は大きな声で言うと、その部屋を出ていった。
残された麻耶は静かに涙を流す。
「蘭子にも…嫌われちゃった…」
誰にも気がつかれないように声を殺して泣き続け、止まることのない涙はポタポタと畳の上に落ちていく。