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狂い咲く花
第48章 四、金盞花 – 絶望
───…
「食べたなくない!!」
「いらない!!」
ガシャンと大きな音と共に、癇癪を起した蘭子の声が響き渡った。
投げ出され、割れた皿と散らばった食べ物を拾い上げながら麻耶は唇を噛みしめていた。
6歳になろうとしている蘭子は反抗的になり、麻耶の言うことをきかなくなっていた。
父様と母様がいる時はおとなしいのに、麻耶とふたりっきりになると反発する。
今日もまた、お昼御飯が気に入らないとお膳の上の物をひっくり返していた。
それを麻耶は何も言わずにただ片付ける。
「これも、いらない!!」
手元に残っていたご飯茶碗と箸までも投げつけた。
それがちょうど、麻耶に当たりゴツンと鈍い音が聞こえた。
「蘭子!!」
何も言わずに片づけをしていた麻耶は蘭子の名前を強く呼び、手を挙げた。
───パシッ
初めて、蘭子の頬を平手打ちする。
「そんなに食べたくなければ食べなくていい。今後、蘭子のご飯は作らないから」
衝動的に叩き声を荒げる。
そのまま蘭子の顔を見ず、投げ捨てられた食べ物を拾い集めていたため、叩かれた蘭子がどんな顔をしているのか麻耶には分からなかった。
片付け終わると蘭子に声さえかけずに部屋を後にする。
自分の部屋に戻った麻耶は蘭子を叩いてしまった手を見て大きな溜息をついた。
叩く気など本当はなかった。
本当に咄嗟のことだった。
この時期は反抗的になることは母様から聞いて知っていたし、我慢しようと決めていた。
しかし、ふたりっきりになると変貌する蘭子に麻耶の心も限界をむかえていた。