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狂い咲く花
第48章 四、金盞花 – 絶望
呆然と立ち尽くす麻耶の身体に、ポツリポツリと冷たい雨が落ちてくる。
先ほどまで明るかった空は、どんよりと雨雲が広がり容赦なく麻耶を濡らす。
この雨で蘭子も濡れていないか、一人寂しい思いをしていないか、そればかりが気になり一人にしてしまった事を後悔する。
雨足が強くなる中、それでも麻耶は蘭子を探し続け、何も履いていない足は木々で切れ血が滲みでていた。
それでも気にすることなく走り回り探した。
どこをどう探し回ったのか、もう覚えていない。
気がつけば、美弥がいる寺の前に来ていた。
まだ会うことはできないとその場を離れようとしたが、もしかしたら美弥に会いに来たかもしれないと遠くから確認だけしようと中に足を向けた。
美弥の部屋からは灯りが漏れ、中からは蘭子の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
ホッと心を撫で下ろすと同時に三人の会話が耳に飛び込んでくる。

『蘭子を父様と美弥姉様の子供にして?』

『そうね。蘭子が私の子供になってくれたらうれしいわね。ねっ。葉月』

『そうだな…三人で幸せに暮らすか』

『父様、美弥姉様、大好き』

その会話を聞いて動けなくなる。
またしても自分の好きな人は自分の手の中からすり抜けていってしまうのだと絶望だけが襲う。
もう涙さえでないのだと麻耶はどしゃぶりのなかただ立ち尽くしていた。
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