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狂い咲く花
第49章 四、昼顔 – 絆
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「熱があがってきたみたいだな…」
麻耶の呼吸が荒くなってきたのに気がついた和尚が、麻耶の額に手を置いて確認する。
「妙仁…すぐに玄白先生を呼んできなさい」
険しい表情で告げると、妙仁は急いで医師の玄白を呼びに行った。
残された者はただ祈ることしかできない。
しかし、医師が来るまでの間に麻耶の容態は悪くなる一方だった。
苦しそうに浅い呼吸を繰り返し、何度、麻耶の名前を呼んでも反応することはなかった。
「玄白先生はまだか!!」
父様は苛立ち声を荒げるが、それを咎めるものは誰もいない。
無情にも時間だけが過ぎていく。
静まり返った寺の中に激しい足音が聞こえてきたのはそれから少ししてからの事だった。
蘇楽が荒々しく障子を開けて中に入ってくる。
「寺の下に明かりが見えました。まもなく玄白先生が到着されると思います」
「わかった」
和尚はそのまま玄白を迎えにその場を離れた。
「麻耶。先生がきてくださったからね。もう少し辛抱してね」
ずっと麻耶の手を握っていた美弥が麻耶の耳元で告げた。
その握っている手に力が籠ることはない。
ほどなくすると、数人の足音が部屋の方に近づいてきた。