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狂い咲く花
第51章 四、虎百合 – 私を愛して
ふたりが抱き合っていると、その間に蘭子が押し入ってくる。
寝転びふたりの顔を下から見上げ、楽しそうに笑った。

「もう、蘭子ったら…つぶしちゃうよ」

麻耶は体を美弥に押し付け蘭子を挟む。

「痛い…母様、痛いよ」

手足をばたつかせ逃げるようにふたりの間から逃げ出した。
それを麻耶が追いかける。

「キャ――」

と騒ぎながら部屋の中を駆け回る。
その幸せな時間を美弥は噛み締め、幸せな時がずっと続けば良いと願う。

「何騒いでるんだ?」

襖が開き、葉月が入ってくる。

「あ――父様だぁ」

助けを求めるかのように蘭子が葉月に突進して抱きつき、それを軽々と抱き上げる。

「麻耶、父さんが迎えにきてるよ」

「そうなの?もっと姉様と一緒にいたかったな」

寂しそうに美弥を見つめた。

「また、いらっしゃい…」

美弥の言葉に頷いた。

「美弥。和尚に呼ばれてるから、ちょっと行ってくるよ。」

麻耶が出て行こうとしている横から葉月が美弥に告げた。

「分かったわ…待ってる」

廊下まで麻耶と蘭子を見送った。
遠くに見える父様が手を振り、蘭子を抱き上げて見えなくなる。
一緒に帰れない悲しみが心に広がる。
葉月といられることは幸せなことではあったが、父様と帰る麻耶をうらやましくも思う。
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