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狂い咲く花
第53章 四、桔梗 ー 永遠の愛
───…
風は静まり、湖は凪いでいた。
満月の光が湖を照らし、崩れることのない月の影がそのまま写しだされていた。
その凪いだ湖に、ひとつの波紋が広がる。
それは徐々に広がり、湖全体に広がっていった。
その波紋を見つめながら女性は涙を流す。
また一粒の涙が湖に落ち、大きな波紋となり広がり、その大きな波紋が女性の悲しみの大きさと比例する。
とめどなく流れる涙を拭うことなく女性は湖に向かって言葉を投げる。
「姉様…」
その名を呼んだ瞬間に、押しとどめていたものが崩れ、声を上げて泣いた。
その声が湖に木霊し、吸い込まれていく。
それは湖が悲しみを吸い取っているかのようだった。
どれくらい時がたったのか…
凪いでいた湖に、一陣の風が吹きぬける。
その風が麻耶の頬を撫でるように吹き去っていく。
寒い冬だと言うのに、その風は温かく麻耶の悲しみを包み込む。
風が吹いた後の湖は何の変化もない。
だがしかし、麻耶の目には確実に映っていた。
葉月に寄り添い、幸せそうな美弥の姿が…