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第10章 一、猩々木　-　祝福

―――パシンッ

その勢いで麻耶の身体が地面に崩れ落ちた。
それでも父親の怒りは収まらない。

「お前は夜中にどこに行ってたんだ！えっ？そんなふしだらな娘などいらん。二度と帰ってくるな」

「おじさん待って…話をきいてくだ―――」

父様の腕をつかみ話をしようとした瞬間、葉月もまた殴られた。
今度は平手ではなく拳で叩かれる。

「何でお前と麻耶が一緒にいる！俺たちが…俺たちがどんなに心配していたか分からないのか」

今にも襲い掛かりそうなほどの剣幕で怒鳴ってくる。
父様の怒鳴り声に眠っていた人たちが起き始め、野次馬根性で覗いているのが分かる。

「あなた…とりあえず家に戻りましょう。ここでは人の目もありますから」

母様が駆けつけて宥めるが、一度怒りだしたらおさまることはない。

「人の目なんて関係ないだろう」

「あります！嫁入りの前の娘に変な噂がたったらどうするのですか！」

いつもおっとりとしている母様がピシャリと制する。
強い眼差しで何も言わせないように威嚇する。
それに負けるのは父様だった。
諭された父様は黙って自分の家の方に歩いていく。
そんな怒っている父様に今から話すのかと思うと震えが止まらない。