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第1章 　

幾秒か躊躇したが、泣いている彼女の縮れた髪をそっと撫でてやった。
「大丈夫……今日は大丈夫だ……」
そう優しくつぶやきながら。
彼女が上目つかいで私を見た。
少女の表情が崩れた。
「ユー・アー・ベリー・カインド……アイ・ハブ・ノー・ダディ……アイ・ウォンツ・ダディ・ライク・ユー……」
そうか君にはお父さんがいないのか……。
彼女は多分、この歳になっても父親の愛情を知らないのかも知れない。
だから、優しくした私に父親の姿を思い描いたのだろう……。
「心配ない、心配ないよ、今日はこのままゆっくりお休み……」
また語りかけた。
「プリーズ・ホールド・ミー」
彼女はそう言い続けた。
私の首に手が回された。
少女の頬が私の頬に付く。
濡れた感触があった。
「ホールド・ミー・パパ……」
耳元に少女の幼い声が響く。
抱きしめて……パパ……。
少女はそう言っているのだ。