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山猫と狼
第1章 狼と出遭った山猫

ロイ・フォーヴは、窓から漏れる朝日で目が覚めた。


清々しい目覚めではない。


むしろ、これが夢であってほしいと願うような最悪の朝だった。


「お目覚めのようですね」


慇懃で冷たい男の声が後ろから聞こえた。


「あれだけの戦いで生きているとは、さすが『山猫』ですね。プリンセス」


「山猫」のロイは振り返って男を睨めつけた。


「黒い狼」の異名を持つクロード・ヴォルフが、ロイを見下している。ウルスラ国の、二十五歳の若き国王。


カラスの羽のような美しく不気味な黒髪と、爬虫類のような酷薄な漆黒の眼差し。


少年のような幼さと同時に狡猾さを感じさせる彼の横顔は、冷ややかな美しさを湛えていた。


ロイはクロードの喉笛目掛けて飛びかからんばかりだったが、腕と脚は縄で動きを封じられていた。


「クソッ・・・!」


ロイは激しく身を捩ったが、無駄だった。


王の娘として生まれた誇り高いロイには、このような扱いが非常に屈辱的だった。
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