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山猫と狼
第12章 別れの朝
「ロイ殿下!」


スノートルはじめ、解放されたロイの兵士たちが彼女の元にやって来た。


「みんな、よくぞ無事で、耐えてくれたな・・・!」


ロイは一人ひとり肩を叩き、ねぎらいの言葉をかけた。


「道中、リュリたちを護衛してやってくれ」


「もちろんです」


兵士たちは熱のこもった声で返事をする。


ロイはスノートルに近づくと、彼の耳元で、あえてアレクシアの古い言葉で話をした。


「スノートル、お前はよく頑張ってくれたな」


「とんでもありません。殿下こそあんな辛い目に・・・」


ロイは間を開け、言葉を継いだ。


「・・・・・このままで済む訳がない・・・・・。私はあいつを殺すつもりでいる」


「何と・・・」


スノートルは、ロイの告白に胸を突かれる。


「一週間、遅くても一か月以内にはあいつを殺す。


ほとぼりが冷めるまで、私は国境を越えてどこかに亡命する。


お前はウルリケとアレクシアの国境付近に待機し、その手配を手伝ってほしい。頼まれてくれるか」


「もちろんです」


スノートルは二つ返事で答えた。


彼女のためにできることなら、たとえ命の危険があっても引き受ける所存だ。


「ありがとう、私は本当に良い臣下を持ったものだ」


ロイの賛辞に、スノートルは心から嬉しくなった。


「もったいないお言葉です」


スノートルは唇を噛み、涙腺がゆるむのを精いっぱいこらえた。
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