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山猫と狼
第10章 完全なる結婚
「湯あみはいかがでしたか」
開け放した窓からの微風に吹かれながら物思いに耽っていると、寝室にクロードがやって来た。
彼は遠慮なくずけずけと部屋の中を進み、彼女の隣に腰を下ろす。
「昨夜はお楽しみでしたね」
クロードはロイの手を取り、さすりながら囁く。
彼女はぶるっと身を震わせ、彼の手を振りほどいた。
「さあ、今日こそは、二人の婚姻の契りを交しましょう」
クロードは、彼と目を合わさず窓の外に顔を向けるロイにそう言った。
ロイは無言だった。
この男に何を言おうと、無駄だ。
私が拒否すれば、こいつは私の大切な人たちに手をかけるに違いない。
私に残されているのは、こいつとの結婚のみ。
でも、・・・・・。
「そうそう、ロイ殿下。今朝あなたの兵士たちに会いました。皆さんとても元気でしたよ」
「・・・本当だろうな。もし手を出していたら、お前を殺すぞ」
ロイはクロードの目をじっと睨み、彼の言葉に嘘がないか探った。
彼は笑みを浮かべていたが、目の奥はぞっとするほど冷たかった。
「当たり前じゃないですか。彼らは大切な『お客様』です」
ロイは、クロードの言葉の裏にあるどす黒いものを読み取ろうとした。
こいつは、何かよからぬことを企んでいる・・・。
悪い予感が彼女の脳裏を過った。