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山猫と狼
第11章 ロイ殿下の輿入れ
いつの間にか朝がやって来た。


頭の中を様々なことが去来し、ロイはほとんど眠ることができなかった。


「おはようございます、ロイ殿下。よく眠れましたか」



クロードの妙に明るい声で、ロイははっと身構えた。


「昨日は本当に素晴らしいひと時を、ありがとうございました。


ますます殿下が好きになりましたよ」


クロードはロイの手に触れようとしたが、彼女はさっと手を引っ込めた。


クロードは相変わらずにやけ顔のまま、言葉を続けた。


「今日は、本番の婚礼の儀式が執り行われます。ご招待したお客様も到着なさったようですよ。窓の外をご覧ください」


ロイが城の庭に目をやると、見慣れた馬車がこちらを目指して進んで来るのが見えた。


・・・・アレクシア王家の紋章・・・!



「お気づきですか。ロイ殿下のご家族ももちろんご招待致しました」


「お前、いつ家族を呼んだんだ」


「はあ、三日前に呼ばせていただきました」


クロードの答えに、ロイは憤慨した。


「お前、私の手紙をすり替えたな・・・!」


クロードはロイの書いた手紙の筆跡やサインを真似させ、臣下に結婚式の招待状を書かせたのだ。


「最初からこうなると予期していたんですよ」


「クソ・・・!」


悔しがるロイを、クロードは涼しい顔で見下ろしている。


「では、12時に王家の大聖堂でお待ちしております。ドレスで目いっぱい着飾ってきてくださいね」


クロードは言うと、踵を返して部屋を出た。


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